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2015年12月9日 13時40分 JST
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Source: Fujitsu Ltd
富士通研究所、世界最小・最高効率の12ワット出力ACアダプターを開発
窒化ガリウムHEMTを活用し、モバイル機器の急速充電を実現

東京, 2015年12月9日 - (JCN Newswire) - 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、窒化ガリウム(GaN)(注2)高電子移動度トランジスタ(HEMT)(注3)(以下、GaN-HEMT)パワーデバイスを用いて、スマートフォンなどの急速充電を可能にする世界最小・最高効率となるACアダプターを開発しました。

近年、スマートフォンやタブレット、モバイルバッテリーなど充電池を持つ様々なモバイル機器が急速に普及する一方で、環境負荷低減を目的として、充電時の消費電力削減が課題になっています。また、大容量バッテリーを搭載したモバイル機器の急速充電の要求も高く、ACアダプターの小型化、高出力化も重要な課題になっています。

今回、低損失化に影響の大きなスイッチ素子に動作抵抗の小さいGaN-HEMTを使用した、小型・高効率なACアダプターを世界で初めて開発しました。スイッチングのタイミングを正確に制御する回路を新たに導入し、損失電流の発生を抑制することで、12ワット(W)出力のACアダプターでは世界最小の本体容積(15.6cc)、かつ、世界最高電力効率87%を達成しています。GaN-HEMTの持つ高速なスイッチング動作特性で小型化を、低い動作抵抗で電力効率の向上をそれぞれ実現しています。本技術により、モバイル機器充電時のACアダプターの消費電力を5割削減でき、従来の3分の1の時間での急速充電を可能にします。このACアダプターを広く適用することでCO2排出量が削減され、環境負荷低減にも寄与します。

試作したACアダプターは、12月10日(木曜日)から東京ビッグサイトで開催予定の展示会「エコプロダクツ2015」にて参考出展します。

開発の背景

近年、スマートフォンや携帯電話、タブレット、モバイルバッテリーなど充電池を持つ様々なモバイル機器が急速に普及しており、大容量バッテリーを搭載したモバイル機器の長時間駆動とその急速充電の要求は高く、ACアダプターの小型化や高出力化が望まれています。一方、環境負荷低減を目的として、充電時の消費電力削減も課題となっています。米国エネルギー省が2016年2月より施行する外部電源(EPS)の効率基準改定(LEVEL-VI)では、6V以下の電源はその動作時の効率が最大5.46%引き上げられると考えられ、その高効率化への取り組みが重要になっています。

課題

現在普及しているACアダプターは、スイッチ素子(FET: Field Effect Transistor)がオンとオフを繰り返し電圧の変換を行うことで電力を制御する、スイッチング方式を使っています。

ACアダプターを高効率・小型化、高出力化をするための最も有効な手段として、オン・オフの動作回数を増やした高周波数によるスイッチングが求められますが、そのスイッチ素子として、オン・オフを決める閾値電圧が小さくメガヘルツ駆動が可能なGaN-HEMTを採用することはこれに最適と考えられます。GaN-HEMTは、現在電源のスイッチ素子として広く利用されているシリコン半導体(Si-MOSFET)の10倍の周波数で動作し、動作抵抗も10分の1以下と非常に高性能です。しかしスイッチ素子の動作を制御して電圧を安定化させる役割を持つ制御ICは、現状ではスイッチング動作が遅く、GaN-HEMTの性能を最大限に引き出すことができませんでした。さらに、スイッチングのタイミング遅延により回路に逆方向電流が流れて損失が大きくなってしまうという問題がありました。

開発した技術

今回、周辺回路を工夫してスイッチ素子に動作抵抗の小さなGaN-HEMTを使用可能にしました。これにより家庭用コンセントからの電気エネルギーを87%の変換効率で出力でき、一般的な従来品と同サイズのACアダプターと比較して充電時間を3分の1にするACアダプターを世界で初めて実現しました。同出力の従来品と比較した場合、体積は約半分と世界最小です。

スイッチング方式のACアダプターでは、コンセントから入力された交流電圧(日本では100V)を接続機器に応じた直流電圧として出力するために、電圧変換器(トランス)と一定周期で電流をオン・オフするスイッチによって安定した直流電圧を得ます。入力からトランスまでの回路ブロックを1次側(AC-DC変換部)、トランスから出力までの回路ブロックを2次側(整流部)と呼びますが、低損失な回路を構成するには、双方の回路にスイッチ素子と電流を流す時間を調整する制御用のICを配置し、連携して動作させることが必要です。ACアダプターの場合、2次側の電流が大きくなるため、2次側の低損失化が重要です。

スイッチ素子として、GaN-HEMTを採用することにより高速動作が可能となりますが、制御ICより出力される制御信号波形の形状によっては損失を増大させる動作を引き起こし、特に2次側で発生します。2次側のスイッチ素子が電流を流すタイミングを、1次側のスイッチ素子によるオン・オフ動作と合わせ、常にGaN-HEMTに適切なタイミングで電流のオン・オフを確実に行うためには、制御ICから出力される制御信号波形の形状が急峻になるように調整する必要があります。

2次側の制御ICの基本動作は、スイッチ素子の電圧に合わせてスイッチ素子のオン・オフを制御する電圧を発生させますが、高速動作の影響でオフの動作が相対的に遅くなり、その結果、スイッチ素子電圧の上昇中に一時的に通常と逆向きの電流が生じ、これが損失となります。

今回、2次側の制御ICとGaN-HEMTとの間に、新たにタイミングを制御する回路を導入しました。制御ICが生成する電圧の波形を調整することで、従来発生していた高速動作の際の損失電流発生を抑制でき、GaN-HEMTの持つ低い動作抵抗を活かしながら適切なタイミングで電流を出力できます。これにより、ACアダプターの効率を高め、小型・高出力化を実現しました。

効果

開発技術の実装により、小型で急速充電が可能なACアダプターを実現しました。さらに、GaN-HEMTの持つ特性を最大限に引き出すことで無駄な電力を削減でき、米国エネルギー省が2016年2月に施行する外部電源(EPS)の効率基準Level-VIにも対応可能となります。このACアダプターを広く適用することで、CO2削減にも寄与します。

今後

富士通研究所は、本技術のさらなる小型・高効率化をすすめ、2017年度中の実用化を目指します。また、より高出力な回路の実現も併せて検討し、ノートパソコンなどへの展開も進める予定です。

本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2015/12/9.html

注釈
注1 株式会社富士通研究所: 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐相秀幸。
注2 窒化ガリウム(GaN): ワイドバンドギャップ半導体で、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)など従来の半導体材料に比べてより高い電圧で動作可能。
注3 高電子移動度トランジスタ(HEMT): High Electron Mobility Transistor。バンドギャップの異なる半導体の接合部にある電子が、通常の半導体内に比べて高速で移動することを利用した電界効果型トランジスタ。1980年に富士通株式会社が世界に先駆けて開発し、現在、衛星放送用受信機や携帯電話機、GPSを利用したナビゲーションシステム、広帯域無線アクセスシステムなど、IT社会を支える基盤技術として広く利用。

概要:富士通株式会社

詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。

トピック: Press release summary
Source: Fujitsu Ltd

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