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2025年12月1日 11時10分 JST
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Source: Fujitsu Ltd
富士通、AIの活用により、10万原子超からなる全固体電池界面構造の高精度・長時間分子動力学シミュレーションを実現
原子レベルの界面構造解析を実現するニューラルネットワーク力場訓練手法を開発

東京, 2025年12月1日 - (JCN Newswire) - 当社は、このほど、全固体電池の性能を大きく左右する固体電解質界面層(solid electrolyte interphase、以下SEI)(注1)の形成過程について、これまで困難だった原子レベルでの構造解析を実現する、分子動力学(molecular dynamics、以下MD)シミュレーション技術を開発しました。本技術は、ニューラルネットワーク力場(neural netwok potential、以下NNP)(注2)を用いたMDシミュレーションにおいて、長時間にわたる安定的なシミュレーションを可能にする、知識蒸留技術(注3)を用いたNNPの訓練手法の開発により実現したものです。これにより、10万個を超える原子により構成した全固体電池の電解質膜と電極の界面構造(注4)の約10ナノ秒という長時間にわたる原子の挙動を、MDシミュレーションにより1週間の計算時間で高速、高精度に再現することが可能になりました。

本技術の革新性が認められ、公益財団法人 電気科学技術奨励会(注5)による令和7年度「第73回電気科学技術奨励賞」を、2025年11月25日に受賞しました。また、当社は今後本技術を、当社の材料化学計算プラットフォーム「SCIGRESS」に搭載し、2026年3月までに提供を開始する予定です。

背景

近年、材料物性を原子レベルで高速・高精度に予測する手法として、NNPを用いたMDシミュレーションに注目が集まっています。特にこの数年では、様々な種類の材料を含む数千万件ものデータで訓練されたNNP(以下、公開NNP)が公開され、活用が広がりつつあります。しかしながら、公開NNPを用いたMDシミュレーションでは、特に全固体電池のような複雑材料で、シミュレーション中に材料構造が崩壊するという問題がありました。さらに、大量データで訓練された多くの公開NNPでは、グラフニューラルネットワーク(graph neural network, 以下GNN)(注6)と呼ばれる、表現力は高いが計算速度が遅いアーキテクチャが採用されているため、10万原子を超える大規模系の長時間シミュレーションの計算には、1年以上を要すると見込まれ、現実的ではありませんでした。

開発技術について

このたび、当社は、大量データで訓練された公開NNPの知識を、多層パーセプトロン(multi layer perceptron、以下MLP)(注7)と呼ばれる計算が高速なアーキテクチャのNNPに転移することで、高精度な訓練を可能にする知識蒸留技術を開発しました(図1)。GNNで構成される公開NNPは、計算速度は遅いものの、数千万件ものデータで訓練されているために、知識量は豊富であると考えられます。一方で、MLPは計算が高速である反面、GNNと比較して単純な構造のアーキテクチャのため、表現力に劣るという課題がありました。そこで、公開NNPの持つ広範な知識と、シミュレーション対象の材料構造に特化した知識を、計算が高速なMLPで構成されたNNPに学習させることで、10万原子規模の大規模系の安定した長時間MDシミュレーションを、高速に実行することが可能になりました。

図1:開発した技術の概要

開発した技術による成果

開発した技術を、次世代電池である全固体電池の電解質膜と電極の界面(原子数127,296)に適用したところ、図2(b)に示すように、複雑な構造であったとしても、10ナノ秒にわたる安定した長時間MDシミュレーションを、約1週間の計算時間で実行できることを確認しました。その結果、これまで実験や既存のMDシミュレーションでは困難であった、全固体電池の性能を大きく左右するSEIの原子レベルでの構造解析を実現しました。SEI形成は、全固体電池の充放電サイクル寿命と安全性を決定づける現象であり、そのメカニズムの解明が望まれていました。本技術により、これまで未解明であった原子レベルでのSEIの形成プロセスが解析可能となり、SEI形成制御手法の開発の加速が期待されます。

図2:全固体電池の電解質膜と負極電極界面のNNP-MDシミュレーション結果。(a) 1,344原子での実施例。開発技術の適用により、界面構造が崩壊することなく高速計算を実現。(b)127,296原子での実施例。10万原子超の大規模系において、10ナノ秒の安定したMDシミュレーションを約1週間で実現。

今後について

今後当社は、開発したMDシミュレーション技術を、当社の技術である、大量のシミュレーション結果や実験結果の因果関係を高速に分析できる因果発見AIなどと連携させることで、コンピューティングとAIが材料開発を主導する新たな開発フローを確立し、お客様と共に新材料創出を目指します。

URL https://global.fujitsu/ja-jp/pr/news/2025/12/01-01 



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